彼の特徴でもある、大きくはっきりした瞳が印象的な写真ではないだろうか。
鼻筋に当たった光と右腕をあげたことによって生じた影から覗く瞳から、彼の意志を感じる。
なぜ意志のある瞳をしているのだろうか。
これは決して偶然ではない。
撮影した日は、一ヶ月も前であるが、その光景や感情は今でも覚えている。
彼は、カメラマンとすぐに意気投合し、カメラマンの指示に楽しそうに、一生懸命応えてくれていた。末の妹がメインの撮影だったので、自分の番がくるまで妹の撮影風景を見守ってくれていた。兄弟の撮影でよく見る光景で、他の兄弟が撮影している時、自分も写りたくて、撮影スペースに割って入ってくる兄弟がいる。私も兄弟がいるので、その気持ちをとても理解できる。自分にも注目してもらいたい気持ちや、楽しいところに行きたい気持ちなどからくる行動だ。
彼は、割って入ってくることはなかったが、今か今かと待ち構えていたに違いない。
なぜなら、カメラマンとの会話を楽しみながらも、指示にしっかり応え、時々かっこいい表情をしていたからだ。
カメラを向けられると、見せる表情があり、こんなに、大人っぽくかっこいい子だっただろうかと何度か思った。
小さいながら、撮られたいイメージをしっかりと持っていると感じた。

何箇所かで撮影した後、最後に窓際の、彼が立っているこの位置まで来た。
普段は、室内で撮影が完結することがほとんどであるが、この時はいつもと違い、カメラマンが突然、室内を飛び出し、外に出ていったのだ。
そして、窓を隔て、彼の正面に立ち、カメラを構えた。
彼や私、その場にいた彼の両親も、ワァーと歓声をあげ、驚きと同時に、どんな仕上がりになるのかとワクワクした。
彼は、カメラマンと向き合っていたため、私からは後姿しか見えず、彼の表情を読み取ることはできなかったが、カメラマンを前にし、より撮られているという意識が生まれたのか、それまでになく、彼の中のかっこいいイメージが強くなり、その想いが現れたように思う。

彼の右側に、ボケてはいるが室内のインテリアが見える。
どこで、撮られたか状況が分かる。
数年後振り返って、この写真を見たとき、どんな話がされるだろうか。
皆でワァーと盛り上がったあの時の話や、この時、こんな表情やポーズができたんだね等、
話が盛り上がるに違いない。