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見えないことで見えるもの
投稿日:2017/4/15
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たとえば音。
たとえば被写体がその瞬間に見ていた光景。
音は写真に写らない。
どれだけ賑やかな都会の喧騒の中で撮ろうとも、
写っていたのが1輪の花だけだったのならば。
見る人によっては
それが路地裏にひっそりと咲いていた花と捉えるかもしれない。
または日の当たる広い野原で、のびのびと育った1輪と想像するかもしれない。
音は写真に写らない。
しかし被写体を囲む光や色で、受け手にそれぞれ違った世界を見せてくれる。
そして被写体が見ていた光景も写らない。
その時誰と一緒にいて、どんな話をしていたのかは分からない。
しかしその一瞬に切り取られた表情から、
その場にいた人との関係性や その時の感情を想像することは出来る。
1枚のガラス越しに撮影された 窓際に立つ幼い少女。
色のないモノクロの世界。
彼女の表情は光の反射で見て取れない。
見えるものが限定された写真において、
更にいくつかの要素が欠けている。
だがこれは必ずしもマイナスにはならない。
色味が少ないという事はそれだけ主張するものが少ないという事。
被写体そのものに視線を集める役割を果たす。
また、モノクロは非現実的な世界観を表現する事が出来る。
人が見ている世界は言うまでもなく色がある。
カラー写真というのは現実を具体的に表現した写真とも言える。
それに対してモノクロ写真は普段見ている景色とは異なる非現実性があり
より抽象的で、見る者の想像力を掻き立てる。
彼女が身に着けているエアリーなドレス、
ガラスに反射した光が作る神秘的なボケと
見えない表情。
そのどれもがはっきりとした形を作らず曖昧で、
まるで誰かの夢の中を覗き見しているような不思議な世界観を感じさせる。
前のめりになるように ほんの少しあげられたかかと。
そこは無数の車が行き交う国道。
何てことない日常の景色が広がる窓の外。
これは外の世界を良く知っている、大人から見た世界。
外を見つめる彼女の目には 何が見えていたのだろう。
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