Photogenic
越谷店
意志と意味
投稿日:2019/1/27
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Photo by Manami
Write by Kanasugi Mayu
@Koshigaya
「この写真はどうしてモノクロで撮ったの?」
大学時代の写真の講義中、教授にそう言われたことがあります。
当時わたしは卒業制作のためにポートレートを撮影していたのですが、その時教授に見せた写真は江戸東京たてもの園で撮影した、女性モデルのポートレートでした。
「タイムスリップ」をテーマに全編モノクロで撮影していたのですが、その趣旨を説明したところ、「なぜモノクロで撮ったのかの意味が薄い」と一蹴されてしまいました。
その時のわたしは教授に理解されなかったことが腹立たしく、「じゃあモノクロで今後一切撮らない」とムキになっていたのですが、
ライフスタジオに入社し、感覚ではなく分析をしながら写真を見てきたことによって、あの時なぜ教授から理解されなかったのかの答えが見えてきました。
教授は写真においてなによりも「光」を大事にしていました。
光の強さ・方向・質感…
単純に「光」といってもたくさんの種類があります。
「光をどういう意味で使うのか」
その理由が確かになければ魅力的な写真にはならないと言っていました。
モノクロ写真は「色」という写真の印象においてかなり多くを占めるものを排除することにより、その他の要素の印象を強めることができます。
以前のわたしの写真は、何かの印象を強めるためにモノクロにしたというよりは、「ただのイメージだけでモノクロにした」と判断されるようなものでした。
それではモノクロである意味が薄いと言われても仕方がありません。
モノクロの写真はそれくらい、慎重に撮影するべきものなのです。
前置きが長くなりましたが、この写真は「モノクロであるがゆえに、[光]の印象を強めることができている」写真であると、わたしは思います。
今回のこの写真は自然光ではなく、バックの定常光を使って光源を作り出しています。
この光源とモノクロの掛け合わせによる効果としては
- 被写体の輪郭をなぞるように光の筋が描かれていることがわかる
カラー写真では中々わかりづらい光の影響が、モノクロにすることでその白と黒のコントラストによってわかりやすくなります。
それにより内側を向いている被写体の鼻筋・細い手足など魅力的なパーツが美しく表現されます。
バックライトのみの写真は少し神秘的な印象を持ちますが、それが今回の被写体の彼女たちの衣装の雰囲気ともマッチしています。
また、バレエのチュチュはチュールという布で作られていることが多いですが、この素材は軽く薄く光を通しやすいのが特徴です。
このチュチュが光を通しているところも、モノクロにすることでわかりやすくなり、より雰囲気を高めることができます。
- この写真における光源の存在感を出すことができる
今回の光源であるこの定常光の手前には、雑貨が置いてある棚があります。
この棚は写真における副主体要素も兼ねていますが、一方でかなり存在感があり、カラーで撮るとどうしても主張が強くなってしまいます。
「後ろから光が来ている」というよりは「後ろに棚がある」というような印象になってしまうのです。
今回の写真において重要なポイントは、このバックライトと、被写体のポーズ。
モノクロにすることで棚の存在感は弱くなり、一番コントラストのついている被写体とバックライトのところに自然と目線がいくようになります。
このように今回の写真はモノクロにする意味がきちんとあり、またそれによって写真の魅力も上がっています。
過去のわたしに求められていたことはこういうことなのではないかと、そう思いました。
ライフスタジオの原本の中にも、定期的にモノクロの写真が入ることがあります。
それは「ただモノクロにした」のではなく、「モノクロにする定義が存在している」という意味がきちんとあるから、その写真はカラーでは撮影されていないのだと思います。
わたしはモノクロの写真で「光」を表現することが好きです。
もちろん、カラーの写真でしか表現できないことはありますし、どちらかといえばモノクロの写真は少し無骨な印象もあるかと思います。
ですが「意味のあるモノクロ写真」は、カラーの写真以上に撮影者の強い意志を感じさせることができると考えています。
「なぜモノクロにしたの?」ではなく
「これはモノクロでしか表現できない写真だ」
そう思ってもらえるような、[意志のある写真]を撮影できるようなカメラマンになりたいと考えています。
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