『シャッターを押す』

Photo/Coordi.OHAGI　Coordi.Nonchan

 

最近、私は「写真を撮る」とはあまり言わず、「シャッターを押す」と表現することが多い。

数年前までは、写真を撮ることは自分にしかできない特別な行為だと思っていました。
私が写真を始めた頃は、まだ日常的に写真を撮る人は少なく（インスタグラムもなかった！）
街で一眼レフカメラを持っているだけで、羨望の目で見られた。

でも今は、誰もが写真を撮れる時代。
写真を撮ること自体は、もはや特別な行為ではなくなった。
だから私は、あえて「シャッターを押す」という言葉を使うようになった。

私は写真を撮る行為そのものではなく、
その先に写る「美しい光」と「人の心」に惹かれているからかもしれない。

光は、ただ明るさを与えるだけのものではない。
その場の空気や時間、季節や温度までも映し出す。
同じ場所でも、同じ光は二度とない。
一瞬の光が、被写体を驚くほど美しく見せることがある。

そして、その光を浴びる人の内側には、必ず物語がある。
だからこそ、声をかけ、空気を作り、心を開いてもらうことに全力を尽くす。

写真は、ただ姿を写すものではない。
光と、その人らしさが交わった瞬間を閉じ込めるものだと思っている。

その記録が、誰かの心を照らす日が来ることを願っている。

だから、私は今日もシャッターを押す。