店舗フォトジェニック集
Photogenic
「君と、見えない木。」
投稿日:2025/5/13
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この写真には、日常で目にするあの木は写っていません。
けれど、誰もが「木の下にいる」と感じる——それは、視覚ではなく心で見せる魔法です。
真っ白な空間に、優しくたちのぼける緑の前ボケ。
そっと差し込む一筋の光と、意図して落とした影の輪郭。
存在しないはずの木の気配が、ふと立ち現れる。
それは、光と色と空気感で描いた“心の風景”です。
白ホリという無垢な空間に、影と光、そして柔らかな緑の前ボケを重ねることで、まるで自然の中にいるような錯覚を与えています。
左から差し込む一筋のサイドライトは、まるで木漏れ日のように男の子を照らし、写真全体に穏やかな温度を宿すと同時に
この瞬間の主役がこの子であると、伝わるように
この日、ひとりの男の子が静かに本を手に取りました。
いつもは働く車が大好きな、無邪気な少年。
だけど今日は、おしゃれな着物に袖を通し、ふわりと髪をセットして、
少しだけ大人びたまなざしで、そこに“いる”ことを選んでくれました。
ページをめくる手元、ふと遠くを見つめるその眼差し。
それはまるで、心の中で物語が芽吹く瞬間のよう。
ただ微笑むのではなく、“感じている”。
その空気を、光と影がやさしく包み込みました。
私たちが大切にしたのは、「空間を作る」のではなく、
関係を感じること。
見えない木を見せるには、スタジオという限られた世界の中で、
どれだけ“想像の余白”を残せるかにかかっていました。
この一枚は、
スタジオという“白”のキャンバスに描いた、小さな詩。
子どもと空間、光と影、今と未来。
そのすべてが響きあい、静かに寄り添う瞬間です。
「美しい関係」とは、きっと目に見えないもの。
けれど、確かに心に触れるもの。
それを信じたからこそ、生まれた一枚です。
Photo&write.ISHII
Coordi.NAGANUMA
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