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彼らの宇宙

投稿日:2021/6/20

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男の子は宇宙人であると、人は言います。


たしかに、
独自の言語で話し、独自の理屈で動き、独自のこだわりや笑いのツボ、世界観を持っている彼ら。
その頭の中に一体どんな宇宙が広がっているのか、私たち大人には計り知れません。


彼らの持つあまりにも広大な未知なる宇宙にまた一歩近づく為に
今日も私達は交信を試みます。



この日
3兄弟は出会った時点でスタジオ内を走り回っていて、彼らの遊びの空間が既に始まっていることに気が付きました。 
常に笑顔の3人は恐らくどう撮っても可愛らしく、今回の撮影が「順調」に進む事が予測できます。


でもそれだけでは物足りない。
今日は「もう一歩」踏み込んだ撮影がしたい。


僕達が持っている引き出しを子供達に当てはめるのではなく
子供達のポテンシャルを僕達が引き出すような
そんな撮影を今回はすべきだと感じたのです。


コーディネーターのくまちゃんに今回の撮影の意思を伝えると、彼らにピッタリの衣装を提案してくれました。
楽しさや可愛らしさを備えたカラフルなジャケットは色を3人それぞれの個性に合わせてあり、適度にカジュアルな装いが被写体の動きを引き出してくれます。
なにより「ジャケット」というアイテムがまず男子のテンションを絶妙に高めてくれて、目論見通り撮影は順調にスタートしました。


走って跳んで踊って…たくさん動いてたくさん笑って
まずは3人を見た時に誰もが描くような写真を楽しく、しかし慎重に撮ります。


その中でこの子供達の本性を引き出すタイミングを、入念に探し…
そしてようやく3人の心が解き放たれ、彼らの宇宙を引き出す為のシチュエーションとアイテムが揃うその時がやってきました。



まったく、「蛇足」なんて言葉を考えた人とは友達になれないと毎回思います。
蛇に足があった方がかっこいいに決まってるし、自分が楚の祭り場にいたら、足では飽き足らずツノや翼も生やして男達を驚かせ、酒を総取りする自信があります。


とはいえ、既に完成された料理に余計なスパイスを加えるというのは毎回ドキドキでするもの。
天真爛漫に、闊達自由に、遊ぶ彼らを見て思いついたアイテムは
ファニーで、シュールで、キッチュなイメージ


少しハズした3つのサングラス。


あえて理由は話さずに手渡す事で
待ってましたとばかりに分け合って被り始め、彼らの遊びが加速します。


3人で乗り込んだ1台の車は運命共同体のアレゴリーでもあり、
ハンドルを奪い合うでもなく、協力しあいながら目的地へと進もうとする一体感はまさに同舟共済。


扉を閉め、エンジンをふかし、強い日差しに思わずサングラスを直して、刹那
子供達はちびっこギャングへと変身し、マンハッタンの市街地を猛スピード駆け抜けていったのでした。



写真分析


この写真の特徴の一つがダイナミックな空間構成です。


24mmという焦点距離が生み出すディストーションが空間を歪ませ天井から床までのあらゆる要素で画面を賑わせていますが、同時に生み出した遠近感が子供達を引き立てている為、煩雑な印象になる事を防いでいます。レンズの一番手前に主役を配置している事で主役の子供達が拡大され、その他の要素は縮小されているのです。
合わせてフレームインフレーム構図によってメインとなる被写体を窓枠の中に配置している為、自然と主題に落ちる目線の流れが作られ、窓枠の内と外の露出差がこの効果を増幅させています。


今回のテーマはこの3人の「ファニーさ」ですので、我々が普段多用する望遠レンズではスタティックさが強調されこれを半減させてしまいます。
そこで選んだ広角レンズではありますが、絞りを最大まで開ける事で奥行き感が作られ、主役の手前に存在する画面右下のサイドミラーや、反対に主役の背後にあたる左奥の背景までしっかりとボケている事がわかります。


ポートレートでは敬遠されがちな広角ですが、創意工夫を重ねる事で望遠レンズには無い力強い表現力を持っていると気付かせてくれた一枚でした。



撮影の際には、あえてポーズの指定をしないことも少なくありません。
「その子らしさ」を表現する為には、動きを指定するのではなく、自発的な動きを誘導する事こそが大事であり、
その為の空間作りを私達は大切にしているからです。


ライフスタジオのインテリアや衣装、関係性の構築や演出の力などなど
これらが一気に花咲いた時に子供達の本来持つ楽しい遊びの空間が自然と展開され、
世界に一つだけの、その子にしか作る事のできない写真となるのです。

 


Photo :Hisho Morohoshi
Coordi:Takuma Oto

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