Photogenic


青山店
scrollable

Moving on to smiles,

投稿日:2022/8/20     更新日:2022/8/20

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Photo&Write by Reiri

Coordi by Oharu

@AOYAMA

 

撮影者としての、適正な距離感を保つ。

私はいつも、被写体に対してちょっとのめり込み過ぎる。

撮影に来てくれる子どもたちはみんなとても可愛いし、在るがままで美しい。しかし、私たち撮影者の存在は、多少なりともその在るがまま、言い換えれば『自然』な状態に影響を及ぼすものだ。特に青山店は小さな店舗なので、その影響は顕著かもしれない。それを利点とする場面も多くあり、その物理的な近さを鑑みても被写体に対してカメラマン自らが積極的に距離を詰めていく、その姿勢は必要なことでもあると思う。

それはそれでとても良いのだけど、カメラを持った時には、頭はもっと冷静であるべきだ。

カメラは物理的な距離をぐんと詰めることができる。レンズ選択による圧縮効果やボケによる表現は、写真にただの『記録』から『芸術』としての質を含ませることさえできる。限られた四角の中に、目の前の光景のどこからどこまでを入れて、被写体はその範囲の中のどこにどう在ればその魅力を発揮するのか、そういうイメージに基づいた構想を組み立てていくには、一定の物理的な距離感と冷静さが必要だ。

私は多分、そこがちょっと保てていないのだと思う。ただでさえ小さな店舗空間なのに、子どもたちが可愛くて、撮影を楽しもうとするあまりにのめり込んでしまう。主観的で感情的な撮影者、だ。

少し離れて眺めてみないと、全体像は見えない。全体が見えていれば、広く使うのか局所的に用いてみるのか、その範囲内に含まれるあらゆる可能性を選択肢として得ることができる。冷静に、少し離れて眺めて、客観的に把握して、そして選択する。どう撮るのかを。

誰でも、見ず知らずの人の前で、初めての場所で、在るがままの自然な姿でいることは難しい。私たちが緊張している子どもたちを笑わせようとするのは、初めてのその場所や人への警戒心を解くきっかけとして『笑う』ということがとても効果的だからだ。笑顔の写真が素敵なのは勿論だけれど、写真に撮る為だけに笑わせようとしている訳でもない。笑うことで警戒心が解けて、在るがままの姿、その人自身の自然な表情の片鱗が見えるからこそ、笑顔が素敵に見えてくる。

くすぐってみたり、変なことを言ってみたり、おどけてみたりして笑ってもらう、その笑顔もきっととても可愛いと思う。そういう写真も絶対に必要だと思う。でも、そういう時間を経て、被写体自らが自分の中の感情を基点として動けるような『自然な状態』を作り出せれば、その瞬間の表情は被写体自身の感情とリンクして、そのひとを顕す自然な姿として残せるのではないだろうか?

そういう瞬間を引き出す為の、撮影者としての適正な距離感が、あるのではないだろうか?

 

青山店でいちばん、被写体との物理的な距離を取れるのがこの場所。

五明さんがここ数ヶ月で色々と手を加えてくれて、シャビーシックなイメージが加わった。今回そこに誘ったのは、2歳の女の子。幼いながらとても聡明な彼女を、ここで撮ってみたくなった。

前述の通り、青山店の中でいちばん物理的に距離が生まれる場所なので、ここでの撮影は言葉での指示に頼ることが多い。だからこそ、低年齢の撮影で使用することはあまりなかったのだが、高年齢の子に対しては言葉での指示を出し過ぎて被写体の自然さを削ぎ落としてしまっているようなジレンマもあった。それは私自身の準備不足で、シンプルに一言で決められず言葉を重ねて被写体を混乱させたり、構え過ぎたりさせてしまうことは多々あった。被写体のぎこちなさを言葉だけでは拭いきれず、結局何かふざけたことを言って『笑う』という落としどころに落ち着かせてしまう。

少し離れて眺めてみる、広く見てみる、そんな準備のできる距離感が必要だった。被写体への過干渉を控えて、被写体自身の感情が基点となるような表情の誘発と、その雰囲気にマッチさせる世界観の表現を試みる。それには、シンプルでないと伝わらない素直な幼さがある被写体がうってつけだった。

奥行きはあるが決して広くはないこの場所で、2歳の女の子を撮る。既に1シーン分の撮影を終えた彼女と私たちの間には、幾つかの共通認識が生まれていたし、彼女は撮影をとても楽しんでくれていたと思う。その楽しさは、コーディネーターであるおはるちゃんがしっかり彼女に関わりにいって、笑わせようとして笑わせてきた結果だ。

彼女に伝えた指示は、「その鳥さんのカゴ見てごらん」くらいのシンプルなものだった。彼女は言われた通りに、そうしてくれる。しかしその動きの中にあるのは、期待感。1シーン分笑わせられた彼女にとっては、警戒心や緊張感はもはやなくなり、次に何が起こるのかワクワクしながら『その鳥さんのカゴ』を見る。行動のきっかけはこちらからの指示だが、彼女の中から芽生えたそのワクワクした感情は、彼女の表情に作用する。そしてそれは、聡明で無邪気な彼女をよく顕すものだった。

その瞬間を、私は広く空間を入れ込んで切り取った。彼女の幼さは空間の中にちょこんと座るその小ささが物語り、シャビーシックなその空間は彼女の存在に物語性を付与する。そしてこの距離感を維持できているのは、カメラからの死角で物理的な距離を埋めるサポートをしてくれているコーディネーター、おはるちゃんの存在があってこそだ。髪や服の乱れの直しや安全確保、そして何より、被写体の彼女にとって『たくさん遊んでくれるお姉さん』の存在が近くにあることによって、そのワクワクする感情をより昂らせることができる。手の届かない離れた場所から、幼い被写体を悠々と眺めていられるのは、そこにコーディネーターがいてくれるからだ。

 

私はいつも、被写体にのめり込み過ぎる。撮影者として、全体像を把握して選択肢を広く持つ為の、適正な距離感がある筈だ。

その距離感に自分を置く為のひとつのポイントは、そこにいる仲間を信頼して任せること。

少し離れて、口を閉じて、全体像の把握に努める。そうしたら、選択肢はきっと、たくさんある。

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