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静寂とまなざし。

投稿日:2025/5/7

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画面の中央には、白いニットを着た幼児がひとり、そっと腰を下ろしています。
その姿を見たとき、このぬくもりを引き立てる背景はどこかと考え、この場所を選びました。ドライフラワーに囲まれたやわらかな空間に、そっと座ってもらったのです。

コーディネーターがそっとシャボン玉を吹いた瞬間、子どもの視線がふわりと左上の空間に向かいました。その動きはとても自然で、演出された印象はまったくありません。だからこそ、この視線の先に、物語が続いているような余白が生まれました。

背景には、壁一面に広がるドライフラワー。
コットンやパンパスグラス、ユーカリなどの花々が、まるで時間を静かに閉じ込めたように佇んでいます。その落ち着いた色合いと繊細な質感が、子どもの存在を引き立ててくれます。
だからこの背景は、単なる飾りではなく、空間そのものを“物語の舞台”に変える要素となりました。

足元には、バスケット、古書、レトロなトランク、そしてケーキの形をしたオブジェが点在していました。
それらはすべて色味と素材感をそろえながらも、意図的に整えすぎず、自然に置かれて見えるように。
だから、まるで日常の中に物語が混じっているような“リアルとファンタジーの中間”が生まれました。

画面の左側からは、ふんわりとした光が入り、写真全体にやさしい光の層がかかっていました。
前景に映り込む淡い色の植物がボケとなり、立体感と奥行きを加えてくれます。
だからこの角度を選びました。光、空気、小物、すべてが被写体を包み込むように繋がり、一枚の写真として調和する構成を目指しました。


 

まるで物語の世界に迷い込んだような静けさが、この一枚には漂っていました。
装飾された空間に子どもがぽつんと座る姿は、不思議と現実感を持ちながらも、どこか夢の中にいるような印象を与えてくれます。
だからこの瞬間には、“非日常”というより“心の奥の記憶”のような情景を写し取りたいと感じました。

「上の方を見てみようか」という私の何気ないひとことに、コーディネーターが瞬時に反応してくれたことを、今でもよく覚えています。
彼女が吹いたゆっくりと大きなシャボン玉に、子どもが一心に見入ったその表情は、子どもらしい集中と穏やかさが同居していました。
だからこの写真には、心を打つ“まなざし”と“表情”が宿ったのだと思います。

この空間に満ちたドライフラワーたちは、生花とは違い、時間が止まったかのように静かに咲いていました。
それは、成長という“流れ続ける時間”と向き合う中で、一瞬を閉じ込めたいという願いに近いものかもしれません。
だからこの背景は、ただの装飾ではなく、“思い出の保管場所”として存在していました。

足元に置かれた小物たちもまた、現実と幻想の境目を曖昧にしてくれます。トランクや古書は旅や記憶を、ケーキは祝福を象徴していました。
どれも明確な意味を持つわけではありませんが、見る人それぞれが自由に“自分の物語”を重ねられる余白をつくってくれます。
だから、この世界観は完成させずに残しておきたかったのです。

そして写真全体に差し込んだやわらかな光は、まるで空気そのものが感情を抱いているかのようでした。明るすぎず、暗すぎず、ただそっと包むような光。その中で子どもは自然体で存在していました。
だからこの一枚には、“写された”というより、“宿った”という言葉が似合うのかもしれません。

 

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それは、出会う全ての人が生きている証を確認できる場所になること。
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