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横浜青葉店
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こんな仕事よ、ありがとう。 ~Kazuma Gomei

投稿日:2017/7/18

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Photo by Kazuma Gomei
Coordi&Hairmake by Kaori Sasaki
Write by Kazuma Gomei

@Yokohama Aoba



この写真が撮られてから一か月以上が経ちました。
しばらく期間を開けて改めて写真を見てみても、私の中で意味ある写真だと思えましたので、多くの写真の中からこの一枚を文章で記そうと決めました。
少々個人的な話になりますが、この写真が私に意味ある一枚としての理由を記すには、当時の自分の状況の話をしなくてはならないのではないか。
そんな葛藤があったからこそ、文章にするまで時間がかかったようにも、今なら思います。
たった一か月の期間ですが、この一か月は私も変化をした様な気がするのです。
 

「自分の限界に挑戦し続けよう」
そんな安直な決心をしたのは18歳の頃でした。
当時は映画監督を夢見て、映画製作の専門学校に通いながら本編と言われる商業用の映画撮影の現場に繰り出し始めたころです。
社会の社の字も知らない若者が現場でできる事などそう多くありません。
今思うとただの雑用的な仕事が主でしたので、変わりは五万といる仕事内容ですが、当時の私には映画製作の一部に自分が加担している効能感が自分を支配をし、明るい未来の希望だけが、私を救う状況でした。
誰よりも現場に早く行き、誰よりも遅くまで仕事をしました。
現場によっては朝の5時から夜中の3時までという時間拘束がありながらも、自分の限界に挑戦する気持ちだけが体を突き動かしました。
正に夢中だったのだと思います。
でも夢中という言葉を少し分けて考えてみると、夢と中になります。
この状況は夢の中であり、叶わない素敵な理想の中でぐるぐるとしている若者の生活だったのでしょう。
人が働き続けられるような労働環境でなくとも、働く楽しさを何とか見つけ出しながら働いていましたのですから。
 

今も職は変わりながらも、18歳の頃に決めた「自分の限界に挑戦し続けよう」という考えは持ったまま働いています。
何となく自分の決心したことを裏切る事は、若かりし自分に恥ずかしさを覚えさせてしまうのではないだろうか、なんて思うからです。
昔の自分なんて頭の中にしかいないのですけれども。
しかしこの決意こそが自分を苦しめてゆくことになる場合もあります。
限界なんていうものは目に見えるものではないので、自分で設定するものです。
多くの事柄の限界値を自分で定め、その設定された目標点に挑戦し続けられるかどうか。
云わばおかれた環境とは別に考えやすくなってしまう妄信的な意識でもあるかもしれません。
自分を取り巻く環境が変化をしてゆく中、その変化を良い方向へ向ける為、改善点を見つけ出すため、本当に無数の要素を感じながらも、自分が出来る事は限られている状況を顧みず、自己処理が行えずに、悶々しながら時間だけが過ぎてゆきます。
ああ、こうしなくては。
もっとこうしなくては。
時間が刻々と過ぎてゆくのがいつの間にか脅迫観念変わり、心を蝕んでゆきます。
一人でどうにかしようと沼地で溺れない様に葛藤しているようなものです。
書くのも情けないような話ですが、素直な自己分析だと思って頂けると幸いです。
あの時の様に、一筋の光がどこかにあるはずだ、見つけるまで頑張るんだ。
上下の方向も分からないような状況で、沼のそこに向かって泳ぎを進めていたのでしょう。
 

真っ暗闇の中で色々と考え、迷走します。
無数のたらればの怨念が頭の中でリピートします。
そんな時に限って最大の自分自身への疑問が沸いてきました。
 
「写真撮るの好きだったけ?」
 
好きか嫌いかなんてその時の感情によって認識が左右されやすい問題にも関わらずに、ずっとずっと何時間も、何日も、何週間も、答えを探します。
「好きだ」
「本当に?」
「本当に好きだ」
「何故?」
「なんでもだ」
「本当に?」
自問自答を繰り返します。
そんな時は美化された思い出に縋ります。
写真の事は何もわからずにライフスタジオに入社をして、湘南店の黒木さんに電源のつけ方から教わり、考えが具現化されることが楽しく毎日触り、撮影練習では稚拙な写真でも喜んで貰え、慣れてきたころには私の写真で涙を流してくれて、自己肯定感につながり、楽しく美しい時間を思い返します。
そして自己規定をします。
「写真撮るの好きだったけ?」
「きっと好きなんだと思う…」
 


 
出会いはいつも突然です。
彼女はハーフ成人式枠でご予約を頂き、来店されました。
パパさん、ママさん、彼女の3名の家族構成。
ライフスタジオの事は以前から知って頂いていた様ですが、撮る時期と色々なタイミングが合わなく、今回初めてのライフうスタジオでの撮影となりました。
佐々木がヘアメイクを施しているところに、私が挨拶しにいくと、何とも恥ずかしそうに会釈をしてくれる姿は、少々内気な性格に感じました。
パパさんには当たりが強く、ヘアメイクを見ることも、ソロ撮影の撮影風景見せまいとダメ!と話している姿を見て、内弁慶な性格なのだなと彼女へ少し理解したところで撮影がスタートします。
この時は今後の自分の心を救ってくれる人だとは全くもって考えていませんでした。
「写真撮るの好きだったけ?」
「きっと好きなんだと思う…」
 
2メーン目の撮影が終わり、PCに撮った写真を入れ込んで入れ込んでいる時に、コーディネーターをしてくれていた佐々木から提案を貰います。
「ねえねえ、五明さん。トイレの方からいい光が入って来ているのだけれども何か生まれないかな」
「うーん…ちょっと試してみようか」
きっかけは唐突で、カジュアルな提案からです。
確かに現場を見ると、強く窓から伸びてくる光が廊下を煌々と照らしていました。
2シーン目は三つ編みのヘアスタイルとカラフルの衣装から、可愛いイメージを前面に演出するように撮影をしていましたが、3シーン目のドレス姿と、解いた髪の毛が印象を大きく変えていたので、提案を貰ってトイレ側を使って撮影をする事にします。
しばらくは陰影差を強くつけた撮影をしていましたが、なんとなく気になり、トイレ横の手洗い場の状況を確認してみました。
真っ赤な壁紙に小さな窓枠の形をした光を発見します。
青葉店へ来店された方ならわかりますが、そこはとても狭く、とてもでは無いですが普段撮影をするような場所ではありません。
まずドレスと手洗い場という相反する状況ですしね。
 




「ねえねえ、五明さん。トイレの方からいい光が入って来ているのだけれども何か生まれないかな」
生れました、写真と私の心に。
 



ライフスタジオで撮影に使用される光の多くは逆光とサイド光で、75cutの多くはそのような構成になっていることが多いです。
一般的には逆光は暗くなるというイメージがあるようで、意図ある逆光の写真は特に喜びと感動と与えてくれる要因になっているのではないかと感じます。
逆にあまり用途の少ない光は下から当てるアッパーライトとカメラ奥から当てる順光です。
私自身順光で撮影をすることは滅多にありません。
その理由としては一枚の写真の中に陰影を作る事が難しいという考えから、撮らない事が殆どです。
まずは被写体に正面から当てる事で、顔の中に影を作る事は基本的に無くなります。
すると被写体全体に同じ強さの光が当たるので、この場合は顔の凹凸を出すことは出来なくなります。
そこで一つ考えてみることとします。
この小窓の枠を利用した写真をうまくとる事は出来ないだろうか。
この光を一枚の写真の中でハイライトとして設定をした場合、ここでも陰影差を活かした写真が撮る事が出来るのではないだろうか。
他愛もない話をしながら、カメラの設定をしてゆきます。
ダイヤルをカチッ、カチッと回す度に、自分の心が共鳴するように高鳴ってゆくのを実感します。
心が高鳴ると、自然と私の姿にもポジティブな雰囲気がまとってゆき、声の音も高鳴ります。
正直この時どんな話をしていたのかは忘れました。
もしかしたら集中して、会話も支離滅裂だったのかもしれません。
ただ一つ覚えているのは、1cut撮った後に、カメラのサブディスプレイを見せて、
「こういう写真を撮ろうと思うんだ」
と伝えたことです。
この瞬間に彼女と、私と、こコーディネーターの佐々木に小さな共通の目標が生れます。
こういう写真という漠然とした情報と、一枚の写真という投げ出された情報に対して、各人、が自己解釈をします。
こういう写真を各々が瞬時で、どういう写真かを意味付けし各々が表現をし始めました。
カメラマンが構図と光を決定しながら、コーディネーターが細部のチェックを隈なく行い続け、彼女がポーズを付け出します。
その光景は雑誌撮影みたいな雰囲気をかもちだし、一人ひとりが自分の解釈に忠実に表現を始めます。
シャッターボタンを押し込むタイミングを見計らっている瞬間、彼女が優しい笑みを浮かべながら顎を少し上げ、首を傾けます。
感覚的に来た!と思いシャッターを切ろうとすると、髪の毛先が顔にかかってしまいます。
ああっ!と心で嘆こうとした瞬間にフレーム右上から手が伸びてきます。
一瞬の内に毛先が整われしっかりと表情が見えます、まさにコンマ何秒の世界。
佐々木、いや、かおちゃんナイスアシスト。
ピピッ、カシャ。
 

サブディスプレイには3人の主体性が詰まった一枚が表示されていました。
大体一畳半くらいのスペースに、大人2人と10歳が一人。
何とも異様な光景だったかもしれません。
これらの過程を踏まえながら、3人の主観が表現を通しながら主体として表れ、結合された一枚の写真となって表現がされました。
まだ高鳴る鼓動を感じながら、表現をする楽しさ、そして各自の表現が一つになってゆく過程をとおして、自分に大切な事に気付きます。
表現をすることの楽しさ、写真という表現媒体を通して伝える楽しさ、共に作る楽しさ。
やはり私は写真が好きなのだ、撮影が好きなのだ。
 



「写真撮るの好きだったけ?」
「好きに決まっている」
「本当に?」
「本当だ」
「…」
 




このお客様はHP掲載不可です。
大感動の後のモニター後、私は自分の写真分析アルバムを持って口説きに行きます。
写真分析という当社の内部文化、そしてどうしても今回の写真の事を書きたい熱意を伝えます。
少々戸惑いながらもママさんがこんな言葉を。
「うちの子供でいいんですか?」
「いいんです!!」
なんの根拠もない自身だけを伝え、写真分析だけの為の使用という条件付きで特別に許可を頂きました。
 

この文章を書きながら思います。
ライフスタジオは人を目的としている企業です。
人が成長、または発展するには関係が無くては出来ず、一人では行うことが出来ません、外的要因が無いとできません。
今回私の外的要因となったこことは、彼女、佐々木、パパさん、ママさん、写真撮影、光など本当に多くの要素との関係が私を救ってくれたように感じます。
苦しみの時間が長かった分、
爽快感も果てしなく感じるほどでした。
撮影を通しながら、大切なものに気付き、自分の障害を越える事。
これらのことが本当に私にとって意味ある写真になったのだと感じます。
 
撮影中もついつい漏れてしましましたが、多くの事に感謝がしつくせません。
「ライフスタジオを選んでくれてありがとう」
「一緒に撮影をしてくれてありがとう」
「私を救ってくれてありがとう」
そして、素敵な経験が日常にあふれている
「こんな仕事よ、ありがとう」
 

関係で超えてゆくライフスタジオ。
私にとって少し近づけた一枚です。
今では彼女と3DSのフレンドになっています。

 

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美しさを表現し、思い出を記録する、楽しい遊びの空間

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