Photogenic


横浜青葉店
scrollable

ハードボイルド ~Reiri Kuroki

投稿日:2017/8/19

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Photo by Kaori Sasaki
Coordi by Misaki Nakagawa

Write by Reiri Kuroki

@Yokohama Aoba



彼女の写真は、透明感があり、美しい。

だから、こんな写真を撮ってくるとは、ちょっと予想しなかったのかも知れない。
分類中のかおちゃんに、
「れいりさん、見てみて〜真似っこ★」と無邪気に言われ、写真を見て、
「……真似っこどころか、完成させてるじゃないか」と思わず嫉妬したものだった。笑


現青葉店メンバーの中で、彼女がもっとも青葉店にいる時間が長い。
ライフスタジオでもトップクラスのカメラマンと何度も撮影に入り、幾つものPhotogenicを受賞させてきたスーパーコーディネーター。
そんな彼女がカメラを持ち、ファインダーを覗きながら、写真を撮る。
と、なれば、先人たちのPhotogenicを構成してきた彼女だけに、それこそ固定概念に縛られそうなものだが、かおちゃんにはそれがない。
彼女は、自分の写真とひたすら真摯に向き合い続けている。
自分が思う『美しさ』に対して、真っ直ぐでひたむきだ。彼女の中にある『美しさ』の基準は決して具体的過ぎない。だからこそ、様々な要素に対して汎用的で、柔軟に対応しながら、『美しさ』を自分の思うように構成することができる。

日常の些細なことに対しても、彼女のアンテナは反応する。
季節や天候の移り変わりで変化する微妙な光や、被写体自身の特徴や、たまたま動かしていたいつもと違う場所にある小物、そして誰かが中途半端に撮り散らかした場所、光、あれこれ。

私が上手く使えなかった光は、彼女が完成させてくれた。
なんて刺激的な、存在。


この写真から感じられるイメージは、一般的に言われる『美しさ』とは少し種類が違うかも知れない。
先日の写真会議でも、この写真の前後に撮られた写真が題材に挙がり「ハードボイルドだ」と話題になったが、私は敢えて、よりハードボイルド感があるように感じるこの写真について分析しようと思う。
そもそも「ハードボイルド」とは、直訳すれば「固茹で卵」を指す言葉だそうで、その意味するところは文学の表現手法に由来する。
感情を交えず、客観的な態度や文体で対象を表現する、それが「ハードボイルド」の意味であるのだが、現在ではイメージが先行している印象がある。
何処か影を漂わせ、寡黙で、冷静な男。それが「ハードボイルド」のイメージ。
では、この写真は何故そう感じさせるのか。
私は、この「ハードボイルド」の由来を改めて調べてみた時に、「ああ、だからなのか」と納得を深めた。
即ち、客観的なのだ。被写体である、彼に対して。
ミリタリーテイストのジャケット、胸に下げられたサングラス、ハットといった小物は、いわゆる「辛口」なアイテムで、ハードボイルドに相応しい。
コントラストの強いモノクロームの構成も硬派だ。
撮影の裏話を聞く限りは、それなりに愛嬌のある少年だった彼に対して、かおちゃんはそのイメージを覆す硬派な、ハードボイルドなイメージを付与した。
彼女のアンテナが最初に拾ったのは、恐らく、光。
毎日見ている光ではあるが、窓を開けたことによってよりその光は直線的に部屋に入ってきた。くっきりと、影との境目が作られる程の光を、そのように写るように、カメラの感度を下げて、挑む。
その時彼が身につけていた「辛口」なアイテムと、その強い光をマッチングさせる為の選択肢が「コントラストの強いモノクローム」であり、それによって「ハードボイルド」というイメージが、かおちゃんの脳裏にはちらついたのではないだろうか。
最後に拾うのは、被写体の表情だ。
前述の通り、それなりに愛嬌のある少年だったと聞く彼を、極めて客観的に観察した時に、その撮影の前後の流れはともかくとして、この瞬間の光、小物、イメージになぞらえて、「ハードボイルド」に持って行った。
光の眩しさに顔をしかめる、その瞬間の表情はもの憂げだ。彼に対して主観的であれば、「彼らしい表情」を待ったのかも知れない。しかし、この時かおちゃんは客観的に判断し、「彼らしさ」よりも、「彼自身をハードボイルドに演出すること」を選択した。
光も、小物も、モノクロームも、その時揃っていた要素は「ハードボイルド」だ。「彼らしさ」ではなく、見たこともないような彼自身の新たな一面を、「ハードボイルド」というイメージを持って、演出した。表現した。

その統一感のある写真を、私は美しいと思う。

彼女が持つ『美しさ』の基準が、何よりも彼女の武器であるのだと思う。
それは具体的過ぎず、固まり過ぎず、イメージというあやふやな中でたゆたいながら、彼女の手によって降りてくる。カタチにされる。
「ハードボイルド」もまた、美しい。

かおちゃんの存在が、私にとってはとても、刺激的。
そんなカメラマンが側にいる、この環境を、私は求めていたのかも知れない。

彼女が唸る写真を撮ってみたいと、いつも密かに思っている。
 

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