Photogenic
横浜青葉店
scrollable
sense of space, ~Reiri Kuroki
投稿日:2017/9/18
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Photo & Write by Reiri Kuroki
Coordi by Natsuko Takagawa
@Yokohama Aoba
Coordi by Natsuko Takagawa
@Yokohama Aoba
私は何故、ここで、こうしてBabyの写真を撮るのか。
青葉店のこの空間には、普段ならキャメル色のレザーのソファがでーーーんと鎮座しています。
その、めちゃくちゃ重たいソファをわざわざどかして(最近、ひとりで持てるようになりました)、私はここでBabyの写真を撮りました。
何故か。
幾つか理由はあります。
まず、大きな窓から差し込む光があること。
この日は薄曇りで、柔らかな光が窓から入ってきていました。
直射日光と違い、雲を通して拡散した光は柔らかく、白を基調とした空間にふんわりと降り注ぎます。
被写体は、1歳のBabyです。こちらからの指示が通じないBabyに、ある程度広い範囲で本人の自由な動きを許容できる空間として、シンプルな構成のこの場所と、この光を選択しました。
シンプルとは言え、ホリゾントと違い、窓があり、壁は羽目板調で『部屋』としてのディティールがあることも、『被写体と空間』を撮りやすいと踏んでのことでした。
『被写体と空間』を撮る、という意識は、その1枚の写真の中で、被写体の存在する空間に意味を持たせることであり、そこに被写体がいることに意味を持たせることであると考えています。
つまりは、その1枚の写真の中で、『全ての構成要素がそうであることに違和感の無い世界観を作ること』であると思っています。
この写真で言えば、おむつ姿のBabyがひとりで遊ぶ、その仕草やBaby特有のボディライン、そういったものを見せていく上で、違和感の無い空間を構成し、フレーミングし、被写体の存在を極めて『自然的』な雰囲気で写真にすること、です。
しかし、Babyという被写体と、ライフスタジオの空間を調和させるバランスというのは、案外難しいものです。
極めて限定的な時期の、限定的な体格に特化したインテリアは、ライフスタジオの中にありません。Baby撮影店舗だった新横浜店でさえ、そうでした。
実際に、Babyとインテリアをファインダーから見詰めた時には、そのBabyの体格と、自分が普段見ているインテリア、空間とのアンバランスさに戸惑うこともままあります。
そのアンバランスさを解消できなければ、結局は背景があまり写らないミドル〜クローズアップの写真や、ただ被写体の笑顔やアクションに依存した写真が増えていくことになり、原本の流れやストーリー性という点では質を下げていくことに繋がっていくのではないでしょうか。
この白い空間も、前述の通り普段は大きなソファがあり、窓を光源とした自然光が確保できる場所なので、様々な年齢層の撮影に活用されています。しかし、Babyの撮影をしていく上では、重量感のある大きなレザーのソファとBabyの体格とのアンバランスさを感じていました。
そこで、いっそソファはどかして、Babyの為の空間を再構成します。
壁際に置いたクッション、ラタンのバスケット、白いニットのブランケット、本型のボックス、等の小物がその役割にあたるのですが、これらの小物が入ってくることで、おむつ姿のBabyがその空間に馴染みやすくなりました。
具体的に言えば、『素材感』と『色』、『重心のバランスを取る配置』にあります。
まず、おむつ姿のBabyという存在自体が、『ひと』という有機的なモチーフです。
このモチーフを写真の主体に置いた時、例えばここにステンレスやアイアンといった金属製の小物ばかり配置されていたら、それは少なからず違和感を生む要因になり得ます。被写体と金属製の小物との関連性があまり感じられないからです。
(勿論、意図的な対比という表現方法もありますが…)
Babyの素肌感、ひとのからだの生身の感じ、その有機的な曲線や柔らかさを感じる被写体に合わせて、自然物のラタンを素材にしたバスケットや、ニットやクッションといった柔らかさを感じるファブリックを置きました。
次に意識したのが『色』、色調の統一感です。
白い空間と、Babyの肌や髪の色を見た時、また『はだか』という被写体の自然的な状態に合わせる時、ここで選択すべきはナチュラルなカラーでの統一感だと判断しました。
白い壁と、素材感の違う白のブランケット、木の質感を感じる色のバスケット、ベージュ系の色合いのクッション。Babyが遊ぶおもちゃも、木製のナチュラルなカラーのものをチョイスしています。
ここに、ひとつでもヴィヴィッドな色が存在した時、この調和は崩れます。
ヴィヴィッドなカラーは、視覚的に主張をします。この写真の世界の中で、もっともヴィヴィッドに目を引くものは、被写体であるBabyの存在感であるべきです。
レザーのソファをどかしたのも、自然物や柔らかな素材感のものを置いたのも、全て主体であるBabyの存在をより強く感じさせる構成にする為です。
『重心のバランス』については、構図的な話になります。
被写体と空間を撮ろうとする時、ただ広く撮れば良いというものでもありません。そこにあるものや線や面を整理して、それらが持つ『重さ』の割合のバランスを取りながらフレーミングします。
Babyは、物理的にまだ身体が小さい存在です。その小ささが、『Babyらしさ』のひとつの要素でもあり、それをより感じさせる為に空間を広くフレーミングしますが、同時に被写体が小さいが為に、写真の中にぽつんといるだけの状態になってしまっては、被写体と空間の調和は取れません。
だからこそ、わざわざ重た過ぎるソファをどかした上で配置した小物たちの『適度な重さ』が活きてきます。『適度な重さ』は、この場合、被写体の持つ『重さ』との相対的な『適度』さになります。
この写真で言えば、上半分は窓の存在が占めています。それに対し、写真の下半分を構成するものがメインの被写体であるBabyと、配置された小物です。
無駄な余白を無くし、配置された小物と被写体が繋がるような並びを作ることで、被写体の小ささを感じさせながらも他の小物と合わさった『重さ』が写真内の重心を下に落ち着けて、安定感が生まれています。
最後に加えた前ボケは、良いアクセントになりました。写真の左下と右下に入ることでヴィネット効果を発揮して、見る者の集中をより被写体に誘導する役割を担っています。
なおかつ、この前ボケが加わることで、見る者の視点から被写体までの距離感が演出されました。
被写体であるBabyは、この時撮影者の干渉を受けていません。私たちは、Babyに対していないいないばあをしたり、くすぐったりすることをせずに、一歩引いて彼の世界を見詰めます。彼が、本型のボックスの中から星形のオーナメントを持ち出して遊び始めた時に、このフレーミングは決定されました。
被写体がそこにいる、その空間に意味を持たせることは、被写体の存在を極めて『自然的』な雰囲気で写真にすること、と書きました。
Babyが自ら動き出し、遊ぶことを始めた、その瞬間に、この『空間』は彼の為の場として完成されました。
この為に、私はあのめちゃくちゃ重たいソファをどかして、小物をあちこちから持って来て、素材も色も考慮しながら統一感のある空間を構成し、世界観を作り上げました。
はだかのBabyが遊ぶ、その空間として、違和感の無い世界観を。
被写体の存在する空間に意味を持たせること、そこに被写体がいることに意味を持たせること。
意味を持つ、その空間は、被写体の存在と調和して、ストーリー性を感じさせる写真になるでしょう。
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