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写真分析 / 兄〜Man with a mission, ~Reiri Kuroki~
投稿日:2017/11/10
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Photo&Write by Reiri Kuroki
Coordi by Natsuko Takagawa
@Yokohama Aoba
Coordi by Natsuko Takagawa
@Yokohama Aoba
man with a mission,
使命を持った男。
こんなことを書いたら怒られてしまうかも知れないけど、彼は1歳年下の妹よりやや小柄な兄でした。
それが、彼自身の、兄としての、男としてのプライドに少々触れることであるのは想像に難くありません。
何せ、私の兄がそうだったから。
少し個人的な思い入れの話をすれば、彼と彼の妹は、私の兄と私の関係性に似ていました。
(しかも、彼の妹に至っては、私の妹とも似ていました)
だから、そういう固定概念のフィルターで見ていたとも言えるし、そういう視点から表現を試みたとも言えると思います。
でも、大人になった自分から見たふたりの姿は、その関係性が懐かしくもあり、撮影者として心が昂る部分があったのは確かです。
だから、今回は、後者であることにしようと思います。
ふたりは1つ違いで、ハーフ成人式の撮影に来てくれました。
通常、ハーフ成人式の撮影では、対象となる10歳の子のソロをメインに構成され、きょうだいがいる場合は2ショットと家族写真のみ一緒に撮影を行うことになっています。
しかし彼らは、1つ違いということもあり、ふたり一緒にハーフ成人式の撮影をしたいとのことで、わざわざ妹を1年待っての撮影でした。
前述の通り、今は兄でありながら少々悔しい体格差となっている彼ですが、彼自身はとても素直で、時にやんちゃな表情を見せてくれるくらい、パパさんやママさんから見たら「まだまだコドモで……」と思わず笑ってしまうくらい、純粋な少年でした。
勿論、その対格差をいじられると少しムキになる部分もあり、その反論の仕方が昔の私の兄にそっくりで、思わず笑ってしまいました。
未熟児で生まれ、生後1ヶ月を保育器の中で過ごした兄と、3,500gオーバーで生まれて来た大食漢Babyだった私は、それこそ彼らと同じくらいの年頃まで、私の方が大きく、力も強く、凶暴だったものでした。笑
だけど、彼には安心して欲しい。その優位性は、中学生後半くらいで逆転します。
兄は私より背が高くなったし、性格は穏やかだったので腕力を実感することはあまりなかったけれど(笑)、それでも理性的で私に無いものを持っている兄は、私にとって『兄』という男性的な存在感を強く持つひとです。
だから、今はまだ小柄でも大丈夫だよ、そのうちに君の方が大きくなるから。男の子の方が、成長期は少し遅く来るんだから。
そんな話をしたら、彼はちょっと嬉しそうに笑っていました。
実際に、兄より大きい妹だった私の話は、信憑性を伴うものとして受け止めてもらえたのかも、知れません。
11歳の男の子。
意識をしたのは、より男性的な力強さを感じる写真として表現すること、でした。
そして、この場所と光を選択した時、彼は私のイメージを汲んでくれたかのように、表情を変えました。
家族写真やきょうだい写真の時は、相対的に『息子』や『兄』という認識が付随します。
だからこそ、そこにある『家族』や『きょうだい』という関係性を意識して撮ることができるのですが、ただひとりとしてそこに立つ彼は、その名前を持ったひとりのひととして、そこに存在します。
そこにいるのは、彼ひとり。11歳の男の子。
そして、その「ひと」を、そこで向き合う撮影者が表現します。
私のお兄ちゃんに似てるなぁ、とか、
妹といるとたまに弟と間違えられて悔しかったりするんだろうな、とか、
これからどんどん男らしくなっていくんだろうな、とか、
そんなことを想う撮影者である、『私』が、彼を表現する写真を、模索します。
現実の彼は、まだまだ『子どもらしさ』が現れている場面の方が多いようです。
だからこそ、普段の彼とのギャップを感じさせる表情を、光と影のコントラストを利用した演出で強調しました。
光を遮断した暗い空間で、1灯のみのシンプルなライティング。
色という情報を敢えて省くことで、構成要素がシンプルになり、被写体への集中が高まります。
壁の質感はざらざらと無骨で、まるで何処かの路地裏のような世界観を漂わせます。
やや顎を上げてもらったのは、男っぽい迫力と彼の『大きさ』を強調する演出でした。
素直でやんちゃで、まだまだ『子ども』かも知れない。今はまだ、年の割には小柄かも知れない。でも、数年のうちにその目線はぐんと高くなっていくでしょう。
その、まだ見ぬ彼の姿に重ねるような、そんな気持ちでやや下からカメラを構えていました。
11歳。
自分と他者、主観と客観という世界の隔たりを、感覚的に知り始める時期。
そんな時期の彼を、ただただシンプルに、より男性的な力強さを感じる写真として表現すること……
つまりは、かっこ良く撮ってあげたかっただけ、なのです。
家族から見たら『まだまだ子ども』であっても、本人にとっては少し気にするコンプレックスがあったとしても、私にとっては初めて出会う11歳の彼の姿は、充分にその魅力に溢れた『ひと』でした。
素直で純粋で、ちょっと気にしている部分があって。そしてこれから、大きな変化をしていく、その過渡期の手前。
そんな今の彼の姿に、彼の未来のイメージを、重ねていく。
ひょっとしたら、何かどでかい使命を持った、立派な男になるんじゃないかと思いながら。
少しハードボイルドなこの写真が、彼にとって、ひとつの客観として自分の姿を受け止める、肯定的な記録になれば良いと、思っています。
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