コーディネーターという目線から見る撮影について
 
 
双子の男の子が「七五三の記念で」と撮影に来ました。
ママさんから話を聞くと、二人にはお姉ちゃんがいるそう。でもこの日の撮影には来ていませんでした。
「お姉ちゃんはすごく写真が好きなんです。だから連れてくると、この子たちのカット数が減っちゃうから置いてきたんです、今日はこの子たちをたくさん撮ってあげたくて」
笑いながらそう話すママさんの横で恥ずかしそうに緊張している二人。
二人はきっとママに連れられてきて、本当は写真を撮られるよりも体を使って遊んでいたいんだろう、というのが彼らの言動やしぐさから少しにじみ出ていました。
 
ママさんの希望は５歳の記念なのでフォーマルっぽい服でそれぞれソロと二人で、それと二人でカジュアルな服で撮りたいとのこと。
せっかくの記念ですし、２人のフォーマルを多めに撮りましょう！とママさんに提案し、私は洋服を選びに行きました。
 
この撮影の時は新横浜でお世話になっていたあかねさんと久々に一緒に入ることになっていました。
撮影のパターンや２人の様子を説明したあとにあかねさんから「カジュアルとフォーマル、どっちから撮る？」と提案が。
 
今まで、撮影の順番を自分で考えたことはあまりなかったのですが、この子たちのことを見ていて、きっと撮影の雰囲気に慣れてきたら楽しくなってきて収拾がつかなくなるであろう予想をして、緊張感のあるうちにフォーマルから撮ることを提案しました。
そのぶん、きっちり撮ったあとのカジュアルは全力で遊ぼうと。
 
 
そしてフォーマルのコーディネートを考えました。
双子というのは難しくて、お任せします、という言葉の中にも、実は「双子らしいコーディネート」を求められているのではないかと思います。
個性があって、でもどことなく揃っている組み合わせ。
今回は白シャツを中心に、ベストとスラックスにベレー帽を組み合わせてコーディネートしました。
 
その時に大事にしたのは彼らの雰囲気です。
二人は双子ですが、体型や雰囲気が少し違いました。
写真の向かって左の子、弟くんは体型はちょっと細くて、つっけんどんな恥ずかしがり屋で「ツーン」みたいな子。
右の子、お兄ちゃんはちょっとふっくらしていて、はにかみやさんな恥ずかしがり屋でちょっとニコニコしている子。
その２人の雰囲気からあえて逆のイメージの色の洋服を選ぶことで、彼らの印象をお互いに寄せようと考えました。
 
弟くんにグレーのセットアップを選ぶとより彼はクールでスタイリッシュな雰囲気になり、お兄ちゃんに茶色の方を選ぶとより彼は優しく穏やかな雰囲気になります。
彼ら１人ずつならきっとその方が似合ったかもしれません。
でも、大事なのは、「彼らは双子であり、メインで撮りたいのは２ショット」というところなのです。
 
彼らが横に並んだ時のことを考えます。
少しふっくらした方のお兄ちゃんがグレーで引き締め、細身の弟くんがいわゆる膨張色の白を着る。これによって二人の体型の差がすこし中和されます。
より彼らが「双子らしく」写るのです。
 
そして頭には同じ形・だけど色の違うベレー帽。
全体のトーンを気にしつつ、お兄ちゃんにはグレーに合うネイビーを、弟くんには茶系に合うグリーンを選びました。
足元もそれぞれパンツと同じ色の靴を。
これで彼らの「双子コーディネート」は完成しました。
 
 
この写真は、フォーマルでの２ショットの最後にあかねさんが「後ろ姿も撮ろう！」と言って撮影したものです。
引きで全身が入る写真、それによって私が考えたコーディネートが前面に見えてきます。
被写体の彼ら自身を活かすために、後ろに余計なものがないこの場所をあかねさんは選んだのではないかと思います。
 
そしてアクセントに、あかねさんはパステルカラーの星のクッションを彼らに渡しました。
少しシックな色のコーディネートの彼らにワンポイント、鮮やかな色が加わることで、背景のパステルブルーの壁とも統一感が出て被写体・背景がひとつにまとまります。
 
そこで、彼らに声をかける。
真ん中から振り返るように、と事前に教えていたうえで。
 
立ち姿・クッションの持ち方・振り返り方。
少しずつ違っていても、彼らが双子であることが二人がお腹がつくくらい近くの距離にいたり、やはりどことなく似ている表情からにじみ出ています。
これがただ単に歳の違う兄弟だったり、歳が同じ友達同士であってもこの雰囲気は生まれないと思います。
お互いを尊重しつつ、でも共通点を引き出してあげること。
それが「双子の２ショット写真」なのではないかと思います。
 
こんなに澄ましている彼らも、着替えたあとは全力でスタジオ中を駆け回っていたのですが…
それは、また別のお話。