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写真分析 / 色から始める
投稿日:2018/2/17
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Photo&Write by Reiri Kuroki
Coordi by Mayu Kanasugi
@Yokohama Aoba
Coordi by Mayu Kanasugi
@Yokohama Aoba
感覚的なものを説明するのは、難しいことです。
しかし、感覚にも根拠はあります。『何故そう感じたのか』は、シャッターを押す動機となる、大切な出発点です。
そして、感じたものをどう表現するのか。
これは、出発点からどのような道を辿り結果物まで行き着くかという『how to』であり、技術的に筋が通っていることが求められる部分です。
勿論、日々子どもたちの撮影をしている中で、光や色や被写体の仕草、表情といった構成要素が絶妙なバランスで組み合わさって『良い』と感じさせるその瞬間は、本当に瞬間的に通り過ぎてしまいます。だからこそ、瞬発力と未来予測は撮影における重要な鍵になっていて、そういう瞬間的判断の根拠になってくれるのが技術なのだと考えます。
なぜ、そう感じたのか、には根拠があり、
どうして、そう撮ったのか、にも根拠があります。
やはり、アタマがカタいようです。笑
真面目な話はこのくらいにして、ちょっと楽にいってみましょう。
この写真を撮った時の動機は、
「あ、きれい」と思った、まずはそれだけです。
じゃあ、『何故』綺麗だと感じたのか?
まずは、『色』の要素が大きいでしょう。
写真の中のブルーと、イエローと、僅かなグリーン。その色合いを爽やかにまとめる、柔らかな光。これらの要素が、とても『綺麗』だと感じさせます。
と、言うのも、写真の中で、『色』は看過できない存在感と情報量を持つ要素であるからです。
『色』はそれぞれにイメージや印象を持っています。ブルーやライトグレーには『寒色』として寒々しい印象を持ち、オレンジやイエローには『暖色』として暖かさを感じます。濃いブラウンやオフホワイトやグリーンに落ち着きを感じ、鮮やかな赤には興奮作用があったりもする訳です。
(一応、色彩検定持ってるので、その知識に基づいております……)
と、いう訳で、まずは『色』という視点で写真を見てみます。
やんちゃで元気いっぱいの彼は、私服とスーツで2シーン分の撮影が終了しており、最後の3シーン目でした。そのやんちゃっぷりによく似合う、目にも鮮やかなイエローのカーディガンを翻して、彼は遊んでいました。
このインテリアは、ネイビーがベースカラーになっています。本来であれば、この写真で見られる色よりももっと濃く、暗めの色合いです。しかし、この日の1件目の撮影だったこの時、太陽は高くなり始める時間で、窓から入る柔らかく拡散した晴天の光は、そのネイビーを3トーン程明るいスカイブルーのような色合いに見せました。
ここで活きてくるのが、なすちゃんが被写体である彼に合わせてくれたコーディネートです。
彼が羽織るカーディガンのイエローは、ブルーに対しての対比となる色です。ブルーは寒色、イエローは暖色であり、互いに相反する性質を持つ色と言えるでしょう。
だからこそ、ブルーのインテリアの中でそのイエローは、映えました。写真の中の、少なくはない面積をブルーが占める中で、際立つイエローは鮮やかに被写体の存在を主張します。
ネイビーのインテリアは光を受けて爽やかなブルーに見え、その中で鮮やかに存在感を主張するイエロー。互いに相反する性質を持っているからこそ、効果的に引き立つ関係。
それを繋ぐ、僅かなグリーン。グリーンは、ブルーとイエローの中間色にあたります(青と黄色を混ぜたら緑色になりますよね?)。前ボケとして、ほんの僅かに入れ込んだグリーンも、この写真内の色彩的な統一感に一役買っています。
例えばこの中に、ひとつでも赤や紫が入っていたら、きっと一目見て
「あ、きれい」と思う前に、違和感が強く残るでしょう。
この統一感が、『綺麗』と思わせたひとつの根拠です。
また、彼が着ている衣装のイエローが、ただ『色』としての存在感を放つだけではなく、彼の存在そのものに対して効果的に作用しました。
私は、少し前に『そのやんちゃっぷりによく似合う、目にも鮮やかなイエローのカーディガン』と書きました。
やんちゃ=イエロー、という訳ではありませんが、暖色系の色はエネルギーを感じさせます。
夏の日差しの中で、力強く花開く向日葵なんかはわかりやすいイメージだと思いますが、いかがでしょうか。多くの場合で、ヴィヴィッドなイエローは『元気』なイメージがあると思います。
暖色系の色味は暖かさを感じさせ、暖かさとは有機的なものであり、大きく言えば『生命』に起因するものであると考えます。だからこそ、被写体である彼の元気さ、やんちゃさといったエネルギー、ひいては『生命力』を引き立たせるコーディネートであり、色が持つ効果が発揮されていると言えるのではないでしょうか。
例えばこれが、イエローのインテリアにブルーのコーディネートをされていたらまた違った印象でしょうね。いや、イエローのインテリアなんて、考えただけでも落ち着きませんが。
まあとにかく、『色』に関してはそんな感じです。
次に、写真の構図と被写体の点を見てみましょう。
前ボケが僅かに、ヴィネット状に入ることで、トンネル効果を生みました。隙間から覗き込んでいるような、空間的な距離を感じさせる臨場感は、被写体から撮影者の影響をできるだけ感じさせないようにする意図があります。それはつまり、極力被写体を自然な感じに見せる、ということでもあります。
何しろ『楽に、楽しく、自然に』がここ最近のテーマなもので、撮影者の干渉をびしばし感じるカメラ目線の弾ける笑顔ー!!!とかよりは(75カットの中で、そういうのも勿論撮ってますが)、こういう仕草的なものを抽出して、それがより自然に見える構図で写真を構成しています。
とは言え、彼のこの仕草も
「ねえねえ、靴の先っぽにまっくろくろすけついてるよ」という私の声かけを受けてのものなので、全く自然発生的なものではありません。
自然な、とは言うものの、ただ被写体任せで生まれるものだけ偶発的に撮っているのはスナップ写真でしかなく、ライフスタジオで提供するべき写真としては、もう少しだけ撮影者の意図も反映させたものでありたいと考えています。撮影者が被写体に干渉しながらも、その干渉の影響を写真からは感じなくさせるようなもの。
矛盾しているようですが、結局のところ『仕組まれた自然な感じ』であるのかも知れません。
しかし、ライフスタジオの撮影者は、被写体の中から自発的に沸き上がる感情を引き出すことを心掛けています。笑って、ではなく、笑ってしまうようなことを言いますし、やります。
感情が動くことで、その感情が『笑う』という行為に繋がるのであって、例えば細かい指示だけしてその行為だけ実行してもらっても不自然極まりないのです。だからこそ、
「爪先を触って」ではなく、
「まっくろくろすけついてるよ」という言葉になります。
その言葉を受けた彼が、『まっくろくろすけ』に触る、そのちょっと悪戯っぽい表情と、その仕草。そこに、『彼らしさ』が顕れるのは、彼の中で動いた感情が彼の行為に繋がっているからです。
そして、彼のその『彼らしさ』は、統一感のある色彩の中でその存在感を際立たせました。
ファインダーの中からのぞいたその四角の中を、「あ、きれい」と感じました。
そう感じたものを、そう感じた根拠を持ちながら、構成しました。
明るいブルーの中で、彼のやんちゃな一面を引き立たせるイエローはその仕草を強調し、僅かなグリーンは撮影者の存在を、隠します。
彼の仕草、表情をより自然的に発生させる声かけをして、その動きと表情が生まれた時、『彼』という被写体の魅力をより引き立たせる構成要素として全てが成り立ちます。
色も、光も、空間も、そこにいる被写体の仕草や表情も、その存在も、
全てが違和感なく纏まった、1カットです。
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